ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290)

詳細

• タイトル: ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290) de 服部 正也
• ISBN: 4121002903
• ファイル名: ルワンダ中央銀行総裁日記-中公新書-290.pdf
• 発売日: 1972/06
• ページ数: 304 ページ
• 出版社: 服部 正也

「異世界召喚」のようなことを現実でやっているというような内容だと聞いたので、おもしろそうだと思って手に取りました。「ルワンダの中央銀行に総裁として赴任して改革をする」というものですから、ノンフィクション小説のような気持ちでカジュアルに買いました。しかし、はっきり言って読みながらぼくは恥じ入りました。ぼくが彼を語るにはあまりに未熟すぎて失礼かと思いますが、少し記してみようと思います。ぼくは、世の中にこのような高潔な日本人が昔いたのかと驚愕しました。単なる「いい人」ではなく、知恵があり知識があり無私の心があり、胆力があり人を見る目があり信念を持ち、他者の利を深く考えられる人という印象を受けました。最初ぼくはルワンダ人を侮るような気持ちがありましたが、それがまさにこの本に出てくる典型的な外国人でありました。彼の一つ一つの「当然の行動」はぼくの愚かな部分を鋭く指摘するものであり、ぼくの至らぬ人生にとって猛省を促すものでした。彼の直接本質にあたり、そのための行動は一切惜しまないという品行は絶対に見習わなければならないものだと思いました。自律ができ、それゆえに他人に厳しく要求し、かと言って無理なことは要求せずという質実剛健な人格に惚れ惚れとしました。内容としては、ルワンダ経済を安定させようという話で、勧善懲悪物という感じもしますが、やはりぼくが感銘を受けたのはそこに至るまでの過程です。何をしてどうなったかという一覧だけを見ると「へえ」という感じで終わってしまいますが、「なぜそうしたか」「こうするためにこうした」という苦心、努力、知識に平伏する思いです。もっといえば苦心とか努力とか、そういうことでなく、根底からして彼は覚悟が違っていると思います。単に苦心すれば良いというわけでなく、覚悟を決め、叡智があり、勇気があり、優しさがあったという人間としての資質が全くすばらしいです。すべてにおいてぼくに欠けていた点でした。ぼくはもはや今の自分を見て泣きたい気持ちです。彼からは傲慢さや自尊心あるいは苛烈さがかなり感じられ、ここは見習うべきではないと思いましたが、そんなことは些細なことです。こうした模範となるような人がいたということに、世界と未来が拓けた思いです。自信を持ってオススメします。